パックラフトで川を下る際の注意点

 

パックラフトのメインフィールドとも言えるのが川でしょう。安定性が高いパックラフトは初心者でもダウンリバーを可能とします。
これがダウンリバーカヤックだと、簡単な流れを下れる様になるまでに数週間はかかるでしょう。急流を下ろうとしたら年単位の時間がかかるかも知れません。パックラフトであれば、初心者が数週間練習すればもうホワイトウォーターを下ることすらできてしまいます。


しかし個々に落とし穴があります。

カヤックで高難度な急流を下れる様になるのに何年もの月日が必要で、その間に様々なことを学べます。川の流れについて、危険について、緊急時の救助についてなど、時間がかかるからこそ、その間に知り得る事ができます。
パックラフトは短期間で高難度な流れを下れてしまうからこそ、積極的に自分で学ぼうとしなければ、知っておかなければならない基本すら知らないままに危険に踏み込んでしまうのです。

ここでは初心者がまず知っておかなければならない危険と、そこからの脱出方法についてをまとめていきます。

ただこれは単に知識に過ぎないので、できれば講習を受講頂いて必要な知識を身につけて頂くことを強く推奨します。(初心者講習についてはこちら)

 

 

① 沈脱と再乗艇

 

 

ダウンリバーカヤックの場合、沈(転覆)しても脱艇せずにロールして元に戻る事が可能です。しかしパックラフトの場合ロールは極めて難しく、沈したら基本的には脱艇する事となります。

 

当然そのまま流され続けるのは危険なので、すぐにパックラフトへの再乗艇を試みます。

沈脱してもパドルは絶対に離さない様にしましょう。パックラフトはすぐ近くを流れているはずなので、まずはパックラフトのバウかスターン側に回り込み、ひっくり返ったパックラフトを元に戻します。

この時、荷物が積んである側を自分側にして回転させると簡単に元に戻す事ができます。

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パドルをパックラフトに入れたら、側面のチューブを手で持ってバタ足をしながら勢いをつけます。
チューブを真下にプッシュする様にし、胸から舟の中にダイブします。(体の下にパックラフトを滑り込ませるイメージの方が近いかも知れません。)

 

自力で再乗艇できない場合、下流側に仲間のパックラフトを横付けしてもらい、手で引き上げる形でサポートしてもらいながら再乗艇しましょう。

 


 

再乗艇できる事は、パックラフトで遊ぶ上で絶対に必要な最低限のスキルです。これができなければ、パックラフトで漕ぎ出す資格はありません。沈脱後、できれば20秒以内に再乗艇できるくらいが望ましいです。

いかなる場合も100発100中成功できる様になるまでひたすら練習を繰り返しましょう。
パックラフトを買って、一番最初にやるべき遊びはまずこれです。

 

 

② フット・エン・トラップメントとWWFP

 

 

 

川の底には様々な凹凸があります。大きな石がゴロゴロとしていたり、水を含んだ倒木が沈んでいたり、もしかしたら台風で流された自転車が沈んでいるかも知れません。これらに足先が引っかかると、上流から流れてくる水圧に押しつけられて体が沈められてしまう事があります。これを " フット・エン・トラップメント " と言います。

川での溺死の多くは、フット・エン・トラップメントをはじめとする、動水圧によって身動きが取れなくなる事で発生します。

転覆して流された時、つま先が川底付近にあるとこのリスクが高まります。特に流れが早くなる瀬は水深も浅くなるので、足が岩などに挟まるリスクが高まります。

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このリスクを回避する為、つま先を水面に上げる様にして浮いて流されましょう。
この時、下流側に頭が向いてしまうと、岩などに後頭部をぶつけてダメージを負う危険があります。足先から下る事で、岩などは足で蹴って避けられます。
ラッコの様な姿勢で急流セクションを流される技術を " WWFP (ホワイトウォーターフローティングポジション) " と言います。

この状態で危険箇所を突破しましょう。

 


これについてもいきなり本番で実践するのは危険です。安全な場所で実際に流されながら練習を実施し、しっかりとWWFPできる様になりましょう。特に慣れないと下流側に頭が向きがちですが、手に持ったパドルで向きをコントロールしながら、足を下流に向けられる様に練習しましょう。

 

 

③ アクティブスイム

 

 

しかしこのままではどこまでも流され続けてしまいますので、急流区間を過ぎたら流れからの脱出を試みる必要があります。

操船技術でもお話ししましたが、川の流れの上流側斜め45°の方向を向いて泳ぐ事で、あまり下流には流されず、滑る様に川を横断する事ができます。もちろん川の流れの強さにもよるので、流れが落ち着いたところで脱出を試みます。

まず下流にエディーとなる箇所を見つけ、エディがある側に頭を向け、WWFPの状態のままバタ足をし、フェリーフライドの容量でエディーの流れに近づきます。エディの横まで流れたら素早くパドルを投げ入れ、WWFPの状態から反転し、クロールなどで全力で泳いでエディに入ります。

 

こうする事でパドルを失わずにメインストリームから脱出する事ができます。

流されたパックラフトは仲間に回収しに行ってもらいます。

 

 

④ スローバッグによるレスキュー

 

 

沈する可能性が高い滝や瀬では岸を歩いて下流に回り、スローバッグを構えて待機します。この様な危険箇所は沈して流される事を前提に、危険箇所を下るのは一人ずつにして他のメンバーで救助体制を整えておきます。

 

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要救助者がまだ上流にいる間に、要救助者の胸の前を通過する様な形でスローバッグを投げます。
要救助者は救助者がいる岸とは対岸側の肩で、一本背負する様な形でロープを握ります。この時、絶対にロープを手に絡めない様にしましょう。
救助者はロープを引きながら振り子の様に自分側の岸に要救助者を寄せます。この時、エディーとなるポイントにうまく流す事で要救助者が川から脱出しやすくなります。

 


第一投で失敗した場合、すぐに第二投を投げる必要があります。しかしすでにロープが出てしまっているので、そのまま投げてもちゃんと飛びません。ロープとスローバッグを素早く回収し、ロープがスムーズに飛ぶ様に振り分けます。ロープバッグには水を溜め、重くする事で再度投げられる状態にします。

スローバッグは何度も練習しないと上手く投げられません。流れの穏やかな場所で何度も訓練を行いましょう。

 

 

⑤ 仲間による救助