パックラフトの服装

 

ウォーターアクティビティであるパックラフティングは、全身ずぶ濡れになります。真夏であればさほど心配はありませんが、それ以外のシーズンでは驚くほど短時間で低体温症で命を落とす危険があります。

 

  • 水温 0℃:意識消失 15分以内、死亡 15~45分
  • 水温 1~5℃:意識消失 15~30分、死亡 30~90分
  • 水温 5~10℃:意識消失 30~60分、死亡 1~3時間
  • 水温 10~15℃:意識消失 1~2時間、死亡 1~6時間
  • 水温 15~20℃:意識消失 2~7時間、死亡 2~40時間

 

水温が20℃を下回る頃から急速にリスクが高まり、僅かな時間で意識消失に至ります。特に川の場合、流れが早ければそれだけ熱の滞留も大きく、より早く低体温症に陥ります。また仮にPFD(ライフジャケット)で浮いていても、意識消失すると水面に顔を浸けてしまう可能性があり、この時点で溺水による窒息死の危険があります。

かと言って、夏に防寒対策しすぎると、今度は熱中症の危険が高まります。水の中に入れば体温は下げる事ができますが、暑いのはやはり快適とは言えません。着用する衣服が極めて重要であると言えます。

 

パックラフトにおける衣類は、夏の3シーズンと冬の3シーズンで分けると快適性が高いと感じています。
夏は割と薄着でも問題ありませんが、冬はきちんと装備を整えないと命にも関わります。とは言え、装備さえ整えてしまえばむしろ夏より冬の方が快適なくらい。適切な知識をもって準備する事が大切です。

 


 

夏の3シーズン


晩春 ~ 初秋、関東で言えば、概ねゴールデンウィーク明けくらいからシルバーウィークを過ぎるくらいまでの5ヶ月くらいの期間を夏服時期だと考えて頂くと良いと思います。

夏の3シーズンの衣類は、綿を避け、ナイロンやポリエステルなどの化繊を選択しましょう。ダウンリバーでは岩などの接触を考え、膝丈以上の長さを選択しましょう。薄手のネオプレンパンツとサーフパンツの組み合わせなどがもっとも一般的なボトムスのコーディネートです。

山童では、パドルスポーツに特化したパドリングパンツも用意しています。

七部丈のネオプレンにパンチングが施されたものと、防水透湿素材のハーフパンツが一体化した構造の商品となっています。ネオプレンにより適切な保温を保ちつつ、内部の湿気を適切に外部へ逃す事で蒸れにくい設計になっています。一本持っておいて絶対損しない、すごく便利なアイテムです!


トップスは半袖Tシャツで良いと思います。素材はやはり化繊の速乾素材を選択しましょう。
ちょっと肌寒い場合にはレインジャケットを一枚羽織ると快適です。フードが出ていると危ないので、必ず内側に巻き込んでおきましょう。

標高が高い場所では気温と共に当然水温が下がります。また源流域では地熱に水温が影響されがちで、夏でも水温がとても低い場合もあります。ドライスーツを用意した方が快適かも知れません。

 


 

冬の3シーズン

 

夏の3シーズンとちょうど逆で、晩秋 ~ 初春、関東で言えば、概ねシルバーウィークを過ぎるくらい頃からゴールデンウィークくらいまでの7ヶ月くらい時期を冬服時期だと考えて頂くと良いと思います。

 

冬はあまりに寒く、水に落ちたら死に直結すると思われがちですが、ドライスーツを着ると驚くほど寒くありません。 なんせ泳いだりしても一切浸水せず、中の衣服は全く濡れませんから!
春や秋の気温がやや低い微妙な時期にウェットで行うパックラフティングよりも、厳寒期にドライスーツを着て行うパックラフティングの方が遥かに暖かかったりします。

ドライスーツの内側に、メリノウールのアンダーウェア、フリース、ストレッチの効いたトレッキングパンツやジャージパンツでちょっと暑いくらいです。暑ければ水に飛び込めば割とすぐ涼めるので、真夏よりも真冬の方が快適なほどです。

厳冬期に関しては電熱ウェアの上下、玄関地では加えて薄手のダウンなどを内側に着込むとより快適です!

欠点はちょっとお高い事…。
国内流通しているものだと、安いもので6万円台後半から、平均的には10万円前後。海外のおしゃれなドライスーツだと15~20万円くらいするものまであります。中国の通販サイトなどでは5万円未満で販売されてるけど、どうなんですかね(^^;;

山童では、戦前から日本の救命胴衣を支えてきた高階救命器具が持つブランド " BlueStorm " のドライスーツを取り扱っています。その製品レベルは消防や海保の救助機材を作っているだけあり絶大なる信頼が置けます。

大阪に本社があり、ダメージを受けやすいガスケット(首や手首などからの浸水を防ぐゴムパッキン)などが破損した時も、比較的低価格でしっかりと修理してくれるアフターフォローの安心感があります。

で、このドライスーツがめちゃくちゃオシャレなのですよ!
東海以北では1年の半分以上の期間で活躍してくれるアイテムになります。

冬もドライスーツさえ着ればまったく寒くないので、寒い事を理由にパックラフトをお休みするなんてもったいないです。ドライスーツは出番が多いし、一度買えば長く使えるので買っておいた方が良いアイテムだと思います。

 


 

 

パックラフティングを行う際、乗艇時には基本的に膝下くらいまで必ず水に入ることになります。また川底は濡れて滑りやすかったり、スカウティング(下見)では岩の上を歩くことになる為、濡れた岩で滑りにくい靴である必要があります。
一番おすすめなのは沢登り用の靴です。岩に強いアクアラバーソールや苔とヌメりに強いフェルトソールが採用されており、川での活動において圧倒的に動きやすい履き物であると言えます。
かかとが抜け落ちない様にベルトがついたサンダルやマリンシューズなどでも良いのですが、水圧で脱げやすかったり、足がずれて踏ん張りが効きにくかったりなどデメリットも目立ちます。フラットウォーターであればそれでも良いかと思いますが、ダウンリバーではやはりしっかりとした履き物の方が良いと思います。
登山用品店などで沢登り用の靴が手に入るので、その中から選択することをお勧めします。(下にAmazonリンクを貼っておきますが、パックラフトで履く靴はお店で履いて選ぶことを推奨します。)


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キャラバンシューズ渓流シリーズ

 

尚、ビーチサンダルなどは簡単に脱げて流出してしまいます。海や湖でも、状況によってちょっとテクニカルな歩行が求められる場合もあるので、基本的に避けるべきです。しっかりとした履き物を用意しましょう。


 

手袋

 

一般的にあまりグローブをしている人を見かけませんが、山童としてはグローブの着用をした方が良いと考えています。パドリングの負担も減るし、岩に手をついて怪我をするリスクも低減できるし、ロープで火傷する可能性も減らせます。デメリットはほとんどありません。
専用のパドリンググローブもありますが、山童ではサイクリング用のハーフフィンガーグローブを推奨してます。
現在地確認や写真を撮ったりなどでスマートフォンを操作するケースも多いし、指先を細かく使うことも多いので指は出てた方が作業のストレスが少ないです。またハンドルを握ることを前提とした裁断がなされているので、長時間のパドリングでも手が疲れません。


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ロードバイク用ハーフィンガーグローブ

 

 

水が冷たい時期になったらネオプレーン素材のグローブが快適です。
パドリング専用のグローブも良いですが、生産量の関係からオートバイ用のものが安くて高品質で良いと感じています。


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オートバイ用ネオプレングローブ

 


 

ここに挙げた例はあくまで参考程度に留め、自分なりの最適解を模索してみて下さい。
一番最初に始める際には、ひとまずここに挙げた服装をご用意頂ければ失敗は少ないと思います。特にドライスーツは、最初は購入を躊躇する筆頭となる装備ですが、結局色々試行錯誤して無駄使いした結果、最終的にドライスーツを買うことになります。
多くのパドラーが通る無駄遣いの典型なので、これに関しては良いものを買って長く使う事をおすすめします。

その他の衣類に関しては、主に登山用品を中心に選んだ方が快適です。パドリング専用の商品もありますが、生産数の関係からどうしても登山用品よりコストが高くなります。人口の多い登山の製品の方が低コストで良質な製品が多いので、そちらで選択しましょう。
ウェットウェアやグローブなどはAmazonに売ってる安いもので全く問題ないと思います。

パックラフティングにおいては、常にその時期においてちょっと暑いくらいが丁度良いと思っておいて下さい。
低体温症は本当に命を落とす危険があります。暑い分には水に入れば涼めます。
安全第一でパックラフティングを楽しみましょう!