ロッカーの入りによる特性の変化

 

ロッカーとは、バウ(船首)とスターン(船尾)に付けられるそり返りの事を言います。ロッカーが入っている事によってバウがウェーブ(波)やホール(反転流による穴)に刺さらず、またスターンが流れを邪魔せずにしっかり乗り越える事ができる様になります。つまりダウンリバーにおいては重要な構造であると言えます。

 

波の壁に刺さるとバランスを崩しやすくなる。

 

滝からのドロップオフでは、先端が刺さると前転してしまう。

 


一方で水の流れに対して面で当たることになるので水の抵抗が大きく、静水ではパドリングのエネルギーをロスする構造でもあると言えます。

パックラフトはカヤックと同様にダブルプレードパドルを使用する関係で、パドリングの際には必ず座面よりやや前の位置を軸にパックラフトが回転する力が発生します。
この回転する力を船体側面に発生する抵抗によって打ち消され、推進方向の力へと変換されます。

ロッカーが入るという事は、すなわち喫水線が短くなったり、ロッカーの曲がりが入るポイントから喫水線の端までにかけてどんどん喫水深も浅くなると言う事であり、側面抵抗が大きく低下します。

また水を左右に切る事もできないので、この点においても直進性の低下に繋がります。

 

ダウンリバーにおいては強い味方となる構造ですが、静水域においてはデメリットでしかありません。

一長一短な機構であると言えます。

 

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もちろんロッカーの有無に関わらず、フラットウォーター(静水域)でもダウンリバー(流水域)でも使用することは可能なのですが、快適度には大きな差が出ます。

 

例えば " 明鏡止水 " では、ロッカーを立てずに水を切り裂く構造にして回転抵抗を強めています。全長も長くし、側面抵抗を高めています。さらに全幅を細くし、推進方向の抵抗は減らしています。この様に静水での航行性能を高める為の設計にしています。

開閉式セルフベイラーを設けているのでダウンリバーも行える性能を有していますが、細長い船体は小回りが聞きにくく、またとても水が内部に侵入しやすい設計だと言えます。

 

" 源流 " や " 高山流水 " などのダウンリバー性能を高めたモデルでは、強いロッカーで波を乗り越える構造になっています。これにより滝からのドロップダウンやホールを突破する能力が上がり、波を乗り越えやすくなる一方、直進性はどうしても下がるのでフラットウォーターでの性能は下がります。

 

" 流浪 " や " 山紫水明 "、" 童心 " の様にその中間程度のロッカーのものもあります。ダウンリバーを前提としていますが、荷物の積載性を高める為、航行中の安定性を高める為、ダウンリバーを行う上で必要最低限のロッカーに留めています。ダウンリバー性能はそこそこ高いけど、フラットウォーター性能はやや低いと言った印象です。

 

パックラフトはどの様なものを購入しても、何に使う事もできるのですが、やはり自分自身がどんなフィールドをメインに使うのかを考えて購入すべきでしょう。