
パックラフトを初めて買うときに特に悩むポイントとして、セルフベイラーモデルにするかどうか。
いや、わかります。私も初めてパックラフトを買う時、すごく悩みました。だってセルフベイラーがついてるモデルは高いですもん。
悩んだ末、一番最初にオープンデッキモデルを買ったんですよ。
そしたら当たり前ですが、舟の中に水が入ってきます。
ここでポイントになるのが " どのくらい水が入ってくるのか? " だと思います。
まだ未経験の段階では、この水の入り方が分からないのですよね。
ズバリお答えすると、風呂桶くらい水が溜まります。ふちきりイッパイですw

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瀬をひとつ下れば必ず水が入ります。
ある程度上流域では次々と瀬が現れる訳ですが、状況によってはひとつ瀬を下るたびに岸によって水抜きを行わなければならない訳で、かなり手間です。
もちろんほとんど瀬が無い場所にしか行かないならフラットボトムのオープンデッキモデルでも良いかもしれませんが、少しでも早い流れがあるならば、セルフベイラーかスプレーデッキは欲しい!
そう思って次に買ったのがスプレーデッキモデルでした。
買う前に色々調べたのですが、どうやらオープンデッキは静水での動きが思いとのこと。
ダウンリバーだけでなく釣りにも使いたいので、漕ぎが重くなるのは嫌です。
それにちょっと面倒だなと思っていたのが着替え。
ダウンリバーをすると全身ずぶ濡れになるので、毎回終了時に着替えなければなりません。
スプレーデッキなら濡れないから、着替えなくても良いかなと思ったのも理由の一つでした。
確かにスプレーデッキは濡れないんですけど、乗り降りの際に絶対に裾は濡れるんですよね。靴や裾に染み込んだ水でボトムには小さな水たまりもできます。
全く濡れない訳ではありません。
もちろんオープンデッキと異なり内部に水が溜まることはなく、その点では実に快適なのですが、想像していた以上に乗り降りが手間でもありました。
このストレスはなかなかのものです。

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で、結局スプレーデッキは手放し、たどり着いた答えがセルフベイラーw
購入前に多くのブログやらYouTubeやらを見ていろんな人が言ってる様に、やっぱりセルフベイラーなのだなと。

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新しい趣味を始める時の買い物って多くの場合において一回で上手く行くことってなくて、結局何度も買い直す事になるのってなんでなんでしょうねー。
いや、でも本当はわかっていたはず。
多くの先人の言うことをちゃんと聞いて、はじめからセルフベイラーモデルを買っておけば良かったのです。
しかし、これで終わりではありませんでした……。
一般的に言われている通り、セルフベイラーは静水での使用が重くなります。
これまでフラットウォーターモデルに乗っていたからこそ、その鈍重さが凄い分かります。
いや、重いぞこれ!??
そりゃそうです。
浮力というのは物体が水を押し除ける堆積に比例して強くなります。
船底に穴を開けて水を入れれば浮力は大幅に下がり、喫水(船の水に沈んでいる部分)は当然深くなります。
喫水部の前方投影面積が増えれば当然抵抗が増し、進みは悪くなります。
舟の中の水は重量増にもなるし、セルフベイラーの穴からの水の出入りも大きな抵抗になります。
ダウンリバーに限定して言えば、どうせ勝手に船は流れるし、風呂桶状態にならないのは大きなメリットがとても大きいと言えます。ダウンリバーしかしない人はそれでも良いでしょう。
でもね、海や湖もそれはそれで楽しいのですよ。
たぶん一番最初は多くの人が湖に行くと思います。初心者が初めて乗るのに一番安全なフィールドです。
で、思った以上に漕ぐのが大変だし、たぶん割とすぐに飽きちゃうと思うんですよ。
それで川に行ってみると、ダウンリバーは凄い刺激的で楽しいんです!
だから ” 静水 = 退屈 " の構図が生まれます。
でもね、海で使ってみると印象がめちゃくちゃ変わるんですよ。
波があって不安定だし、風向きによっては戻って来れなくなる可能性もあるし、なんか怖い。
危険性で言えば川の方が遥かに危険なんだけど、心理的な怖さで言えば海の方が怖い。
だから面白いってのもある。
で、海でどう遊ぶかっていうと、やっぱり釣りが相性良いんです。
カヤックや2馬力ミニボートほどは遠くまで行けないけど、岸からではどんなに遠投しても絶対届かない距離まで簡単に足を伸ばせるんです。そして岸からでは滅多に釣れないサイズの魚が割と簡単に釣れるんです。
これは面白い!
その面白さに気がつくと、ダウンリバーしながらの釣りも面白いし、湖でワカサギやトラウトを狙うのも面白い!
いろんなフィールドを楽しみたくなります!!

そんなこんなをやりながら数年。
好きが高じて自分自身でパックラフトブランドを立ち上げる事になりました。
そこで最初に考えたのが、状況によってセルフベイラーとフラットボトムを切り替えられるオープンデッキモデルでした。
パックラフトというキーワードから興味を持った人って、多分ダウンリバーにしか興味がないと思うんですよ。
釣りからパックラフトにたどり着いた人て、湖でバス釣るとか、河口でシーバス釣るとか、海で真鯛狙うとか、特定のエリアでの釣りにしか興味がない人も多いと思います。
でもね、できれば川下りもやって欲しいし、湖や海でも使ってもらいたい。
それぞれのフィールドにそれぞれの楽しさがあり、それぞれの自然の美しさがある。
だからこそ、どんなフィールドでも使えるパックラフトが作りたかった!

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そこで取り入れたのがロールトップ開閉式セルフベイラーシステム。
ダウンリバーではセルフベイラーを開放して一定以上水が入って来ない状態で快適に下ることができます。
しかし急流以外ではセルフベイラーはデメリットになることも多いので、不要な時は閉じてフラットボトムとしても使用できます。
他にも、全てのラインナップにロッカー(溝を受け流す船首の反り)を入れてダウンリバー性能を設け、前後にスケグを入れて静水での直進性を高める工夫を施しています。
あらゆるフィールドで快適に使えるを目指しました!
パックラフトは幅広いフィールドで使える舟です。山奥まで徒歩で担ぎ上げ、源流のゴルジュを下降でき、本流上流部に流れる激流のホワイトウォーターを駆け下り、中流域をゆったりと川旅し、河口から海にかけて釣りができる。寒い冬には湖でワカサギを狙える。そんな舟はパックラフトしかありません。
だからこそ、パックラフトをお求めの方にはより幅広いフィールドで使ってもらいたい。
私が何度も買い替えた様な迷走を皆さんにはしてほしくない。
一回の買い物で人生観を変える体験を提供したい!
そんな想いを持って作りました。
まぁなので、例えば今この記事を読んでるダウンリバーにしか興味なかった方は、是非海釣りもやってみてください。パックラフトでの遊びの幅がめちゃくちゃ広がります。
海や湖での釣りで使うかことを考えていた方も、是非ダウンリバーもやってみてください。パックラフトを買ってダウンリバーをやらないなんてマジで損です。
まぁ作り手の勝手な願いでしかないのですけど、できればいろいろな場所で使うことでその楽しさをもっと知ってくれたら良いなーって、ほんと心から願っています。
山童のパックラフトは、みんながもっと自由に楽しめる舟作りを行って行きます!
ではまた。
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