
パックラフトフィッシングにおけるタックルは、やや短め、やや柔らかめが基本となります。
車で移動し、徒歩移動の距離が短いのであれば2ピースのロッドなどで良いかと思いますが、電車などの公共交通機関を利用したり、自転車やバイクで向かう場合にはマルチピースのパックロッドやテレスコロッドが便利だと思います。パックラフトの特性を活かしたタックル選択となるでしょう。
フィールドの選択幅は広く、渓流から本流、河口、沿岸、湖が主なエリアになります。基本的には陸上からの釣りのタックルで問題ないと感じています。寧ろ、対象魚に対してやや弱めなタックルかも知れません。
パックラフトでの釣りの特性を考えてみましょう。
パックラフトは他のボートに比べとても軽く、また喫水も浅いので舟が動く際の抵抗が少ない乗り物です。陸に足で立った状態よりも魚がかかった時のエネルギーが吸収されやすい、第二のドラグがある状態になります。これはカヤックなどに比べても、魚とのやりとりにおいてかなり有利な条件になります。
ライトなタックルであれば一定のテンションを保った状態で戦いやすく、またパックラフトであれば魚を寄せると同時に自分自身も魚に寄って流されます。
パックラフトだからライトなタックルで良いし、むしろライトなタックルの方がバラしにくい傾向にあります。

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例えば渓流釣り。渓流釣りと言ってもパックラフトが下れる水量が必要なので、本流の上流部あたりからが対象エリアとなります。
40cm程度のニジマスなどが主なターゲットとなってきますが、タックルとしては4ft台のULロッドなど、源流向けのもので良いと思います。
川幅は20~40mほどとなりますが、自分自身が川の中に浮かんでいるので遠投は求められません。川を下るのでロッドは短い方が扱いやすいです。
常に流されながら、エディーからピンポイントで竿抜けポイントを狙っていく釣りとなります。手返し良く素早くキャスティングする必要があるので、どちらかと言えばスピニングよりベイトフィネスリールを選択する方が扱いやすいと思います。
ラインは PE0.6 ~ 0.8 を 100 ~ 150m程度。ベイトフィネスとしてはやや長めですが、自分自身が流されて行くので少し長めにラインを巻いておく必要があります。岩との接触が起こりかねないので本当はナイロンラインなどにしておきたいところですが、ベイトフィネスリールのラインキャパシティを考えるとどうしてもラインの素材選択はPEとなります。

湖や川の中流~河口付近では、6ft台のLクラスロッドに2000~3000番クラスのスピニングリール。ラインはPE0.6-0.8を150~200m程度巻くのが良いと思います。上流域に比べてピンポイントキャストは求められなくなる一方で、ある程度の飛距離を出して探りたいエリアになります。
大きい魚もいるエリアに入ってきますので、取り込みの直前でパックラフトの下に潜られた場合、余裕を持ってパックラフトをかわす必要があります。一方で魚のランディングやライントラブルの解消を考えると、長すぎるロッドも扱いにくくなります。概ね6ft台のロッド長が扱いやすいと思います。
このタックルは沿岸の小物釣りにも適したタックルとなります。陸からではなかなか狙いにくい場所も、沿岸に沿って漕ぎながらの究極のランガンが行えます。
漁港の堤防からの釣りを主に行っていると、ハイシーズンは混み合ってなかなかのストレスを感じると思います。遠くまで行かなくても一歩海に出るだけで周囲には誰もおらず、隣の人に気を遣った釣りを行わずに済みます。
さらにもう一歩先まで進んだインショアエリア。
インショアとは沿岸、近海、湾内、内海エリアを指します。概ね岸から500m以内くらいが対象エリアとなります。
水深は10 ~ 20m程度の場所が多く、深くても40m程度の場合がほとんど。2馬力ミニボートはもちろん、手漕ぎレンタルボートやカヤックフィッシングよりもう少し岸に近いエリアになります。
とは言えこのエリアまで出ると、真鯛はもちろん、ブリなどの青物くらいまでを対象に狙えます。
たまにもっと大物がかかる場合もあります。

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タックルは 6ft台のML ~ MHクラスロッドが一番バーサタイルに使いやすいと思います。硬さはオールマイティーに使うならML、ヒラメや大型のハタなどを狙うならM、青物を本気で狙うならMHと言ったところでしょうか。リールはキャスティングをメインに釣りをするならスピニングリールの方が扱いやすいと思いますが、タイラバやジギングなど真下に落とす釣りではベイトリールの方が扱いやすいと感じています。
時と場合によりますが、基本的にはタックルを2セット。
ダウンリバー中の釣りでは転覆したり、枝にティップを引っ掛けたり、岩に突っ込んだりなどでロッドを折るリスクを伴います。また下って行くとどんどん流域が変わっていきます。早朝に上流域からスタートしても、夕方には中流域まで場所を移動しています。こうなるとタックルそのものを変更しないと釣りになりません。
海や湖の場合、車に予備のタックルを取りに行くなどが容易ではありません。ちょっとしたトラブルひとつでその日の釣りがダメになるので、予備のタックルはあった方が無難です。とは言え、何本もタックルを持ち込めるほど、船内に余裕はありません。ソルトフィッシングでは帰宅時のメンテナンスの手間も、タックル本数が増えるほど増えます。
この様な理由から、基本的には2セットのタックルを用意するのが無難だと感じています。

個人的に、川の上流域~下流域と湖では 4.6ft - UL ベイトフィネスタックルと 6.10ft - L スピニングタックル、川の中流域~下流域と海では 6.1ft - L スピニングタックルと 6.6ft - ML ベイトタックルを使用しています。(ちょっと沖に出る時は9.6ft - MH スピニングタックルも使いますが、ちょっと長過ぎて使いにくい感はあります。)
ベイトタックルのメリットはキャスティング精度と着底の分かりやすさ、巻き上げパワーの強さがあります。上流域でピンポイントに探る場合や湖でわかさぎを狙う場合、海で真鯛を狙うときや大物狙いの泳がせ釣りをする場合などにはベイトタックルのメリットが活きてきます。
スピニングタックルのメリットは飛距離とライントラブルの少なさ、優れたドラグ性能があります。ベイトタックルの弱点としてバックラッシュが起こる点、飛距離で劣る点、ドラグ性能が低い点などがあげられます。スピニングタックルと組み合わせることでそれぞれのデメリットを打ち消すことができます。
ここでご紹介させて頂いたのは私の考えであり、これが必ずしも正解とは限りません。
とは言え大きく外れてもいないと思いますので、このあたりを基準にご自身の釣りに合わせてタックルセッティングを行いましょう。
最後になりますが、パックラフトでの釣りはとても良いものです。
カヤックフィッシングや2馬力ミニボートはどうしても車での運搬が必要です。車から下ろしての準備。帰ってからの片付け、自宅での保管においても手間や苦労が大きいものです。
パックラフトなら、釣りに特化した大柄な船体でも、クーラーボックスなどと共にキャリーカートに積めば、電車やバスなどの公共交通機関で問題無く釣りに出掛けられます。軽量コンパクトなパックラフトを選択すれば、バックパックひとつに全てを積み、自転車やバイクなどでも舟を利用した釣りに行けます。
高価なタックルを組んで岸から100mオーバーの遠投をするのも良いかも知れませんが、パックラフトで一漕ぎすればあっという間に200m、300m先までアクセスできます。
都市部のマンション住まいの方でも自艇を持ち、もっと手軽に自艇でのインショアゲームが楽しめちゃうんです。車道の無い山奥まで入り込み、遡行困難な深いゴルジュの竿抜けポイントに容易にアクセスできるんです。湖を渡った先の誰も足を踏み入れていない源流にアクセスし、パックラフトを背負って遡行も可能です。
ね?そこにロマンを感じませんか?
車にキャリアやトレーラーもいらない。エンジンもいらない。舟の値段も他の船種より安い。収納も小さい。
川の上流部から湖、沿岸まで幅広いエリアで楽しめる。
かなり現実的に誰でも自艇を持つ夢が叶います。
人生観を変えるほどの体験がそこにはあります。
特に釣り師にとって、その人生は確実に豊かなものになります。
パックラフトフィッシングは、きっとあなたの夢を叶えてくれます。
マジで楽しいですよ!
パックラフトブランドも様々ありますが、釣りに特化した舟もあるのでそこは是非、山童のパックラフトを買ってくれたら嬉しいですw
ではまた。