パックラフトを膨らませ方

 

パックラフトは単に空気を入れれば良いと言うものではありません。その空気の圧力によって大きく挙動が変化する乗り物です。しっかりと空気を入れて圧力を保たなければなりません。一方、空気を入れたまま日の当たるところに置いておくと、熱膨張により破裂するリスクもあります。

空気の中に含まれる水分は、温度によって激しく膨張、収縮します。冬であれば空気も乾燥しているし、気温と水温が近い温度(水温の方がやや高い場合が多い)になり熱による影響は少なくなります。しかし夏の時期は、湿度が高いので熱による空気の膨張率が大きく変化するし、外気温と水の温度差も大きくなります。
膨らませても水につけるとすぐに収縮し、空気を追加して再度膨張させなければなりません。しかし休憩時にパックラフトを岸に上げると、熱せられた砂や岩、ジリジリと暑い夏の日差しにより凄まじい熱膨張を起こし、うっかり空気を抜き忘れると破裂する場合もあります。

ここでは、適切な空気圧管理をする為のヒントを書いていこうと思います。

 

 

ポンプサックで膨らませる

 

ワンウェイバルブを外した状態にします。

 

ポンプサックで膨らませ、素早くバルブを締めます。

 


最初の段階ではポンプサックを使って膨らませます。バルブを解放したところにポンプサックをねじ込みます。プラスチックのねじ山を潰すミスを犯しやすいので、丁寧に接続しましょう。
空気を入れ終えたら、素早くバルブを閉めて空気の抜けを最小限にします。

 

 

水でパックラフト本体を冷やす

 

水に浮かばせ、水をかけて空気を収縮させます。

 

ワンウェイバルブの上からジョイントを使って空気を入れます。

 


パックラフトに空気が入った状態で水に浮かばせ、チューブにバシャバシャと水をかけます。場合によっては驚くほど空気が圧縮されます。ワンウェイバルブのキャップを外し、ジョイントパーツを使ってポンプサックを接続します。この段階ではパンパンにはできません。無理せず入れられる範囲で入れましょう。

 

 

高圧をかける

 

口で入れられる限界の力で膨らませる。

 

舟を係留した状態で準備を進めます。

 


210D チューブの製品は、1 - 1.5psi 程度まで、" 高山流水 " に使用している 420D チューブは 1.5 -2.0psi 程度まで内圧を上げられます。また 420D ボトムには 1.5 - 2.0psi、 840D ボトムには 2.0 - 2.5psi 程度まで内圧を上げる事ができます。

口で空気を入れる場合、限界まで空気を入れましょう。概ね 1psi ちょっとまで圧力がかけられるはずです。
ポンプで入れる場合は、定期的にチューブやフロアを叩いて、硬さが変わらなくなるポイントまで入れます。あまり入れすぎるとバーストの危険があるので、ほどほどにしておきましょう。

ハンドポンプなどを使って高圧にした方がより高い剛性を得られますが、負荷をかけすぎると生地を痛めるリスクが高くなります。二気室チューブとボトム一体型インフレータブルフロアにより強固な船体剛性を得られているので、無理せずほどほどに留めておくのが良いでしょう。
口で限界まで空気を入れれば、十分な剛性は得られます。(ただしその場合、僅かな内圧低下で性能に影響が出始めます。口で入れる場合には特に、航行し始めたら何度かこまめに空気を入れ、萎んだ分の内圧を戻しましょう。)

この状態でパックラフトを水に浮かばせたまま係留し、その他の準備に入ります。
準備をしている間、さらに内部の空気が冷やされ、もう少しだけ圧力が下がります。最終的に出艇前に再度空気を入れましょう。

 

 

しばらくしたら再度空気を入れる

 

内圧の低下を感じたらすぐに空気を入れる。

 

難易度の高い場所を下る前には、再度内圧を高める習慣を身に付けたい。

 


ダウンリバーの場合、瀬で何度も水をかぶる事になり、さらに内圧が下がる場合があります。この内圧は瀬を過ぎてしばらく水を被っていないと戻ってしまうので、内圧低下したら早い段階で空気を入れる様にしましょう。
特に滝落ちや高難度な瀬を下る前には、再度しっかり空気を入れる習慣を身に付けたいです。

特に口で入れている場合は元の内圧が低いので、僅かな内圧低下で船体剛性が失われがちです。よりこまめな空気の補充が求められます。

 

 

休憩時は空気を抜く

 

必ず内圧が上がるので、特に晴れた日は大胆に大きく空気を抜く。

 

水の上に浮かばせて係留する場合は、空気を抜かなくても大丈夫!

 


冷やしては空気を入れ、また冷やされては空気を入れを繰り返したパックラフトは、休憩する段階ではこれ以上収縮しない程度まで空気が冷えた状態になっています。この状態で陸上に上げると、仮に曇っていても内圧は大きく高まります。特に夏場であれば温度差はとても大きく、破裂する危険も高くなります。

ちょっと面倒ではありますが、陸上に上げる場合には必ず空気を抜きましょう。特に晴れた日や夏場は、大胆に大きく空気を抜きましょう。
水上に係留しておく場合は空気を抜かなくても問題ありませんが、夏場の良く晴れた日は水に浮かばせている状態でも不安なほどに内圧が高まる場合もあります。この様な場合にはやはり多少空気を抜いた方が良いと思います。

 

 

再び空気を入れて出発する

 

休憩後は空気を入れ、冷やし、空気を入れと何度か繰り返す。

 

係留していた場合、ロープをまとめている間に内圧が上がらない様注意!

 


休憩を終えたら再び空気を入れます。陸にあげている間に内部の温度は再び上昇しているので、一番最初に空気を入れた時の様に何度か冷やして、空気を入れてを繰り返します。
係留していた場合、多くの場合は到着時より熱膨張で内圧がやや上がっている場合が多いです。そのまま再出艇できますが、係留していたロープをまとめている間、僅かな間だけですが陸にあげる必要があります。真夏の炎天下の下だと、この短時間でも驚くほど内圧が上がりますので十分注意しましょう。

 

 

 

パックラフトは規定空気圧まで空気を入れれば良いと言うものではありません。こまめな空気圧管理を心がけることで、適切な性能維持と破損防止を行えます。
外気温、湿度、水温、天候、時期などを考慮し、こまめに内圧を調整してあげましょう。

 

より高圧にする場合にはハンドポンプを使う方法もありますが、何度も空気を入れ直すのでポンプの出し入れが少々手間です。一定以上の空気圧になるとパックラフトの剛性は空気圧ではほとんど変わらなくなります、この為に山童のパックラフトは二気室チューブとボトム一体型インフレータブルフロアを採用し、高い剛性を実現しています。無理に高圧にすると破裂するリスクがるので、口で入れられる限界程度に止めるのも無難だと思います。
本来持っている最大ポテンシャルを発揮したい方は、ポンプの使用も検討すると良いでしょう。

尚、ポンプサックの代わりに電動ポンプを使用するのは手間がかからず良いのですが、電動ポンプは故障する事が度々あります。電動ポンプを使用する場合もできればポンプサックを携行した方が良いと思います。

適切な空気圧管理を行い、快適で楽しいパックラフティングをお楽しみください!