パックラフトはバックパックに納める事ができる事が名前の由来です。元々はアラスカの荒野を旅する際、何度も現れる大きな川の渡渉を安全に、確実に行う為に開発されました。その後、川を下る川旅などに使うなど目的の幅が広がり、様々な分野に特化したモデルが開発される現在に至ります。
単にダウンリバーをするだけならパックラフトである必要性はありません。ダウンリバー性能で言えば、ダウンリバーカヤックの方が性能が高いし、トランクに詰める必要があればダッキーなどの選択もあります。
しかしこれらの舟は、その重量が 15kg ~ 25kg にも至り、とてもではありませんが背負って山奥に入ったり、長い旅に出るのは現実的ではありません。
パックラフトの特性を最大に活かすのであれば、それはやはりバックパックにパッキングしての旅にあると思います。
背負って山奥に歩いて踏み入り、源流の流れを下降する。自転車で川沿いのサイクリングを行い、帰りはパックラフトに自転車を積んでダウンリバーを楽しむ。電車で遠くの海まで移動し、海岸線をツーリングしながら誰もいない入江でキャンプする。
こんなロマン溢れる旅にこそ、パックラフトが活きると思うんです。
舟を担いで林道を歩き進み、源流を下降した。
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山奥まで持ち入り、パックラフトに温泉を溜めて入ってみた!
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パックラフトのパッキングは、どんな装備をどんなバックパックに収納するかで変わってきてしまいます。
ここでは山童で取り扱っている FERRINO " ULTIMATE 35+5 " にパッキングを行っていく流れをお伝えしていきます。装備は 4月頃 ~ 11月頃 で、真夏は高い山の源流を降ることを想定した一泊二日の荷物を想定しています。
軽量化を意識した装備ではありますが、決して無理した内容ではありません。十分快適なキャンプを楽しめる装備構成になっています。
軽量化については次の書籍に詳しくまとめておりますのでお求め頂けたら嬉しい限りです。
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パックラフトのパッキングでは、パックラフティングに必要なものとそうでないものを明確に分け、濡らしてはいけない装備を濡れからしっかり守る事が大切です。
またダウンリバーで使用する装備を取り出しやすく、また片付けやすいパッキングの在り方もとても重要です。
バックパックの奥深くに収納してしまうと河原で荷物を大きく広げることになります。いろいろな装備が砂まみれになったり、風で飛ばさりとストレスになります。
河原に着いたら余計な荷物は出さずに素早く出艇準備をし、幕営地に着いたらスムーズに宿泊準備を行い、翌朝にはそれらを片付け、再び出艇し、終了時にはスムーズにまとめて歩き出したいものです。
スムーズな旅の流れを実現する為には、パッキングの手順がとても重要です。順を追ってみていきましょう。
① バックパックの中にゴミ袋を入れて防水を強化する!
完全防水のバックパックでも知らない間に防水膜が裂けていたり、ロールトップの巻き込みがうまくできていなかったなどの要因で浸水する事が往々として起こります。この様な事態になっても尚、寝袋や防寒着を守るには、バックアップを設ける必要があります。
バックパックの内側にゴミ袋を入れ、その中に濡れては困る荷物を入れていきます。寝袋、マット、テント、調理器具やファーストエイドキット、トイレットペーパーなどをまとめたスタッフサック、防寒着、食料、水。軽くて途中で使うことのないものから順に隙間ができない様に詰めて行き、ゴミ袋の口も何周かロールしてから軽く縛ります。
バックパックの中に水が侵入しても、ゴミ袋によって濡らしたくない荷物を守る事ができます。完全防水を謳うドライバッグなどでも、念の為ゴミ袋バックアップを設けておく事を推奨します。
② 最上部にドライスーツやパックラフトを入れる。
バックパック最上部には、ドライバッグに入れたドライスーツやパックラフトを入れます。使用後のパックラフトは外付けにした方が内部を濡らさなくて良いかと思いますが、使用前の状態であれば内部に入れられるサイズのものであれば内部に入れてしまうのも良いと思います。(横幅がバックパックの幅に収まる様にパッキングする。)
内部収納ができないものの方が多いと思いますが、その場合はロープなどを固定するストラップでパックラフトを固定します。トップリッドの高さを調整してバランスを整えましょう。
ドライスーツは防水性の高い袋に入れておくと、終了時にバックパックの中を濡らさずに済む。
バックパック上部に入れておくと、現地での出し入れの手間が最小限になります。
パックラフトを細めに巻いてバックパックの中に収納しても良いです。
入らない大きさの場合はロープストラップに挟みましょう。
③ パドルを取り付ける。
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パドルのブレードはサイドコンプレッションに挟む様に固定するのがスマートでしょう。この場合、シャフトはアックスホルダーに取り付けるのが良いでしょう。
ドリップリングの位置を調整して、シャフトが下に抜け落ちない様にしましょう。
ただしパックラフトが横に飛び出している場合には、ブレードを横向きに取り付けることは困難です。
この様な場合にはバックパック正面にブレードを固定します。スリットにスキーバンドなどを通し、パドルを固定しましょう。
シャフトは左右に配置し、パックラフトを避ける様に背面側に寄せて固定します。
④ PFD を固定する。
PFDの固定方法は2通り。長距離を快適に背負いたい場合はパックラフト上部に固定します。PFDの腕の部分にパックラフトが通る様にすると、より安定した固定ができます。この場合、ヘルメットはPFDの中に入れると良いでしょう。
この固定方法はバックパックの背面機能を正しく活かせるメリットがありますが、頭上が高くなるので枝や藪などに引っかかりやすくなります。ひらけたルートを長距離歩くシチュエーションに向いています。
このパッキングは見た目にもスマートですが、途中でバックパックを開けにくい不便さがあります。食事や飲み物などはあらかじめ取り出しやすい場所に入れておくなどの工夫が求められます。個人的には飲み物はカラビナでショルダーハーネスにぶら下げ、食事はヘルメットの中に入れて運搬しています。
もう一つの方法はバックパックの胴体部分に巻く様に固定する方法です。バックパックの背面が暑くなるので若干の違和感はありますが、高さが低くなるので藪などに引っかかる率は下がります。
この方法であれば固定した荷物を取り外さなくても、バックパックの荷物を出し入れする事ができます。
この場合、ヘルメットはサイドコンプレッションベルトに顎紐をクリップする形で固定します。背面に大きく飛び出るので、岩の隙間を抜けなければならないルートだとヘルメットをぶつけてしまいます。
もっとも、その様な状況ではヘルメットは頭にかぶってしまえば問題は解決します。
⑤ パックラフトにバックパックを固定する。