パックラフトと一体化

 

ただ単にパックラフトに座っただけでは、激しい荒波の中では振り落とされそうになります。パックラフトに下半身をガッチリと固定する事で、激しい荒波の中でもバランスを崩す事なく果敢に攻め続けることができます。

パックラフトと体を繋ぐには、サイブレイスが必要です。チューブの内側に設置されたベルトで膝を挟み、チューブに押し付ける様に固定します。サイブレイスの有無で体の保持がまったく異なります。


しかしサイブレイスだけでは不十分です。足が前へズレるとサイブレイスの固定力が下がります。

これを防ぐ為に山童パックラフトの全船種において、ダウンリバーを行う際しっかりと足で踏ん張れる設計を施しています。" 源流 " 、" 童心 " では直接チューブで踏ん張れる船内サイズにしています。その他の船種ではフットレストと言う、足で前へ蹴る様にして踏ん張る為のエアバッグを設置しています。

 

加えてバックレストも重要です。フワフワとした空気式のバックレストでは、どうしても腰のサポートが弱くなります。長時間のパドリングを行うにはEVAバッグレストのサポートが欲しくなります。

 

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サイブレイス、フットレスト、EVAバックレストなどを組み合わせれば、体とパックラフトはガッチリと固定できます。運動性能が大きく向上するので、パドルスポーツの道具としては取り入れるべき装備であると言えます。

しかし、特に軽量コンパクト化を考えたい " 源流 " において、EVAバックレストは不要であると考えました。そもそも乗り降りが多く、長時間連続して乗船し続けるシチュエーションは稀です。船内長を短く設計しているので、足とお尻でしっかり突っ張れるので腰のサポートはそこまで重要にもなりません。
エア式のシンプルなものにする事で、EVAバックレストより 200g の軽量化に成功しています。収納サイズも嵩張らなくなる分少しコンパクトになります。


また " 明鏡止水 " でタンデムする場合においても、後部席に関してはチューブがそのまま背もたれになるのでEVAバックレストは不要と考えました。前席は寄りかかるものが何もないのでEVAバックレストを設けています。

 

 

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EVAバックレストと同様に、サイブレイスの選択でも大きく重量が変わります。
ガッチリ固定するなら4点式サイブレイスが良いのですが、サイブレイス単体で260g、サイブレイス取り付けの為のラダープレートが70g、左右で140g。合計400gも重量が増える事となります。

一方、山童が独自で発案した2点式サイブレイスであれば、パックラフトをまとめる為のストラップが1本増えるだけの重量 30g で済みます。

 


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サイブレイスは膝を立てた状態で使います。膝が伸びてしまうと簡単に外れてしまいます。この為、足が前に滑らない様、踏ん張る為の壁が必要になります。
フットレストは、サイブレイスを使う上では必ず必要になる装備であると山童では考えています。

 

ただ " 源流 " や " 童心 " では、そもそも最初からチューブに直接足を突っ張ることを前提に、内長を短く設計しています。

 


激流のホワイトウォーター使用である " 高山流水 " においては、連続する激しい動きの中でパックラフトとの確実な一体感が必要であると考え、4点式サイブレイス、EVAバックレスト、フットレストを備え、大きめの船体でありながら体との一体感を高める設計としています。
重量は重くなりますが、そもそもダウンリバーを目的とする場合、必要以上に長く歩いたりしませんし、重たいキャンプ道具も持ちません。船体重量やパッキングサイズが大きくなりますが、十分バックパックに納める事ができます。

" 流浪 " や " 明鏡止水 " 、" 童心 " においてはそこまで激しいダウンリバーは行わないと想定し、2点式サイブレイスを採用。背負って歩く際の負担軽減の為、軽量化を優先しました。
旅の道具である " 流浪 " " 明鏡止水 " は、長時間航行が想定されるのでEVAバッグレストを装備。" 童心 " もお子様の成長に合わせて船内長を調整できる様にEVAバックレストとしました。

徹底的な軽量化が求められる " 源流 " では、全体的な快適性や固定力以上に、軽量コンパクト性が重要だと判断。エア式バックレストと2点式サイブレイスを採用しています。ただだからと言って決して固定力が低い訳ではなく、他者のホワイトウォーターモデルと比較しても決して劣ることの無いダウンリバー性能を備えています。
" 高山流水 " が異様なまでに高性能なだけで、実は源流も日本の一般的なダウンリバールートであればまず不満のない性能を持っています。(むしろ " 高山流水 " を本当に活かせる激しい流れを探す方が難しいくらい。)

この様に、一概に高機能な方を選択すれば良いという問題ではなく、船首や用途に合わせて適切な選択をする事が重要であると山童では考えています。

 

いずれにせよ、

 

・足をしっかりと踏ん張る事ができること。

・膝を固定する事ができること。

・腰をパックラフトに押しつけられること。


この3点ができない設計では、ダウンリバーにおいて極めて扱いにくい舟となります。
ダウンリバーを行う可能性がある場合、それに見合った設計の舟であるかを良くみて判断してから購入する様にしましょう。静水航行を前提としている場合、足で踏ん張れない船種も多いので注意が必要です。